こんにちは!フルタイムトラベラー、三谷めぐみ (@meg_intheworld)です。
6月下旬にリオデジャネイロのファヴェーラを訪問しました。
みなさん「ファヴェーラ」に対してどんなイメージを持っていますか?
・映画 『シティ・オブ・ゴッド』の世界?
・ギャングによる麻薬組織が蔓延しているスラム街?
・敵対するギャング同士またはギャングと警察官による銃撃戦が日々起こっている?
・絶対に近寄ってはいけない場所?
そのイメージは間違ってはいませんが、頭の中で想像している「ファベーラ」と実際のファヴェーラは少し違うかもしれません。

この記事では、私がリオのファヴェーラを訪問して目にしたもの、感じたことをシェアします。
この記事を通して、TVやニュースメディアで報じられる「ファベーラ」とは違う、ファヴェーラを感じてもらえたら嬉しいです。
ファヴェーラ(Favela)とは?
「ファヴェーラ(Favela)」という言葉を、聞いたことはありますか?
Favela(ファヴェーラ)の直訳は「貧民街」。
貧しい人たちが暮らす地域のことを意味します。
ブラジルでは「ファヴェーラ」という呼び方は「差別的である」という理由から、「Comunidade(コミニタージ=コミュニティ)」と呼ぶ方が望ましい、とされています。
そのため「ファヴェーラ」と呼ぶのは気が引けますが、この記事では日本人にも分かりやすいよう「ファヴェーラ」としています。
ブラジル全体で見ると6%程度のファヴェーラ人口も、リオデジャネイロ州だけで見ると、州人口の25%にあたる130万人もがファヴェーラで暮らしていると言われています。
1990年代にはリリオデジャネイロ州の40%以上人々がファヴェーラに住んでいたので、徐々に減っては来ているようです。(※正確な数字は不明。上記データは英語とポルトガル語記事を参照)
ファヴェーラ在住の日本人との出会い
当初、私たちはリオに1ヶ月滞在した後、サンパウロに1ヶ月滞在する予定でしたが、治安に対する不安から急遽予定を変更。
まずはサンパウロに入り、状況を見て、リオに1週間だけ行くことにしました。
「リオに1週間だけ行く」と決めた時も、ファヴェーラに行くつもりは全くありませんでした。
というのも、私たちがブラジルに入国した3日後の6月17日に、リオデジャネイロ州は財政非常事態宣言をしたのです。
「非常事態宣言」が出た直後に、ブラジル人でさえ「治安が悪い」と言うリオに、その中でも更に危険だとされる「ファヴェーラ」に行くなんて無謀だと思ったからです。
危険だと言われているところに自ら出向くのは自己責任だとしても、万が一何かあった場合には必ず周りに迷惑をかけてしまう。
それだけは避けたいし、なにより旅を続けたい。ブラジルの文化をもっと知りたいし、学びたい事もまだまだたくさんある。
「ファヴェーラ」に興味はあるけど、命の方が大事。だと考えていました。
しかし、リオのファヴェーラで暮らすひとりの日本人女性と出会って、その考えは変わりました。
ファヴェーラで暮らす日本人女性
海外在住の日本人をインタビューする仕事をしていた私は、リオデジャネイロで日本人向けに観光ガイドをしている女性を取材することにしました。
取材当日。
ブラジルと日本の文化の違いや、リオデジャネイロでの暮らし、オススメの観光スポットを聞くうちに、自然と彼女自身のことやファヴェーラでの暮らしの話になりました。
彼女の名前はチグサさん。
リオのソナスールにあるファヴェーラで、コロンビア人の旦那さんと1歳半のお嬢さんと暮らしています。
旦那さんはマクラメのアクセサリーを作ってコパカバーナ・ビーチで売っている「ヒッピー」。
インタビューを終えると、「彼女の暮らす場所=ファヴェーラをもっと知りたい。」と思うようになっていました。

これまでTVやメディアで見てきた「ファヴェーラ」に対するイメージは、間違っているかもしれない。自分の目で確かめた方がいいな。
と思った私は、その場でチグサさんに「ファヴェーラ・ツアー」のガイドを依頼。
そして数日後、私は彼女の住むファヴェーラを訪れました。
リオのファヴェーラ訪問レポート
チグサさんが暮らすのはカンタガーロというソナスールにあるファヴェーラ。
私が滞在しているコパカバーナ地区のアパートメントから徒歩圏内だった。
お互いの最寄駅でもある、地下鉄の駅前で待ち合わせをした。
ファヴェーラは丘の上にあることが多く、通常、永遠に続く階段や、長い坂道を登らないとファヴェーラには辿り着けない。
「今日はあの長ーい階段を登るんだろうなぁ」と覚悟していたが、それは私の「思い込み」だった。
片腕に1歳半の娘を抱くチグサさんに「こっち」と案内された先には、エレベーターが。
地下鉄駅直結のファヴェーラ
そう。彼女の住むファヴェーラは、地下鉄の駅直結のエレベーターでアクセス可能なのだ。
ファヴェーラ行きのエレベーターを待っていると、ファヴェーラの住民の方達が次々と集まってくる。
エレベーターが到着して中に入ると、エレベーターを操作している男性がいた。
チグサさんが抱いている娘さんに微笑みながら話しかけて、エレベーターの扉を閉めた。
正直、このドアが閉まった瞬間が一番ドキドキした。
まだ見ぬ「ファヴェーラ」行きのエレベーターに、「ファヴェーラ」住民の方達と乗っているこの空間に。
エレベーターが到着しドアが開くと、そこには目を疑う景色が・・・!
ファヴェーラは一等地に立つ高級住宅街
これがエレベーターを降りた先に待っていた景色。
リオの街並みとコパカバーナの海が一望できる。
まるでLAの丘にある高級住宅街やタワーマンションから望むような景色。
ファヴェーラに住む人たちは、毎日この景色を見て暮らしている。
思わず「ファヴェーラって高級住宅地みたいですね。」と言うと、「ソナスールのファヴェーラは人気で、実は高級ファヴェーラのひとつなんですよ。」と教えてくれた。
リオの人気観光スポット、シュガーローフ・マウンテン(Pão de Açúcar)もこんなに近い。
有名なコルコバードのキリスト像(Cristo Redentor)も肉眼で見える。赤い丸で囲んだところ。
ファヴェーラの中を歩く
あまりの絶景に驚いた後、いよいよファヴェーラの中へ。
ファヴェーラの入り口には、Museu de Favela(ファヴェーラ・ミュージアム)と描かれている。
ファヴェーラ内にはたくさんのグラフィティがあるので、街全体がミュージアムという意味なのだとか。ステキ!
何かのメッセージを伝えるグラフィティ。
ファヴェーラの生活を伝えるグラフィティなど様々な画が描かれている。
「1907年、奴隷の避難所としてこの地域に・・」とファヴェーラの歴史を伝えるものも。
この絵、なんか好き。どんな意味なのだろう。。
上に行けば行くほど細くなるファヴェーラの道。僅かな隙間から陽が差す。
ファヴェーラの水道代は無料。電気代は有料なので、自分で電気を引けない人はこうして電線を絡めて、自分の家まで電気を送っている(頂戴している)そう。
ファヴェーラ内にはスーパーマーケットもあるし、キオスコ(スナックや飲み物などを売っているお店)や日用品を売っているお店もある。
新鮮な野菜が並ぶ八百屋さん。店主はフレンドリー。
ファヴェーラ内にもバーがいくつかある。
ワールドカップ期間中は、多くの人がここでサッカーを見て盛り上がっていたのだとか。94年USA、02年JAPAO(日本)と開催地が書かれている。
たまたま出会った住人の方に話を聞くと、拾った廃材を利用して商品を作り売っているそう。クリエイティブ!
ファヴェーラのゴミ収集所。
ファヴェーラ内からも海が見渡せる。
屋根の上にある青い丸い形状のものは貯水タンク。
手前の水色と白の建物は警察署(UPP)。
奥のクリーム色のビルは低所得者向けの住宅。造りが良く人気物件だそう。
ものすごーく広い教育施設。
子供から大人まで誰でも無料で、語学、IT、サーカス等を学ぶことができるが、ファヴェーラに住む人たちはあまり利用しないそう。
子供向けのプレイ・ルーム。
幼稚園の後にここで遊ぶ。奥にはコンピューター・ルームや図書館も。
教育施設から徒歩5分。カーニバルのレッスンが行われる場所。
リサイクル・センター。
リサイクル品をセンターに持ってくると日用品(主に清掃用品)と交換できる。
現金ではなく、自宅やファヴェーラ内を美化する日用品というのがとても良いと思った。
ファヴェーラの中で出会った人々
ファヴェーラの中を案内してもらう途中、たくさんの住民の方々とすれ違った。
音楽をかけて陽気に踊るおばさん。
ビールを片手に談笑しているおじさんたち。
チグサさんの知り合いに出会うと、みんな明るく声をかけてくれた。
訪問者の私にまで「やぁ!元気?」と笑顔で挨拶してくれた。握手をした後、ご自身の生い立ちを自ら話して下さる方もいた。
道端でタムロっていた15歳くらいの少年達が「YAKISOBA!(*)」と叫んできたので、私も負けないくらい大きな声で「YAKISOBA!」と返した。
*ブラジルでは焼きそばが人気で、SUSHIと同じくらい知られている。
すると、少年達はゲラゲラ笑った。親指を立てて「イイネ!」とウィンクをし、笑顔で手を振ってくれた。
正直、こんな光景は全く想像していなかった。
ファヴェーラの中は、思っていたよりも全然平和で、あたたかい場所だった。
帰り際、エレベータ乗り場に向かう途中、ニワトリを追いかけながら少年2人がこちらに向かって走ってきた。
映画『シティ・オブ・ゴッド』のオープニング・シーンと同じ、あの光景が、私のファヴェーラ訪問の最後の景色となった。
ファヴェーラ・ツアー、レポート完。
ファヴェーラ・ツアーに参加して感じたこと
簡潔に言えば、私の想像していた「ファヴェーラ」と、実際に見た「ファヴェーラ」は、かなり違った。
私が見たのは、1,000以上あるファヴェーラの、ほんの一部だけれど、それも間違いなくファヴェーラである。
私が目にしたファヴェーラでの生活の様子は、東京のワンルームで暮らす人よりも、ずっと生き生きとしていて、心地よさそうだった。(もちろん、そうでない人もいるだろうけど。)
ファヴェーラ在住だからといって、必ずしも貧困に苦しんでいるとは限らないし、毎分毎秒危機に面しているわけではない。
金銭的には裕福ではなくとも、豊かに暮らしている人たちもいる。
住む場所がどこであろうと、「幸せ」かどうかを決める、「幸せ」を感じられるのは、本人しかいないし、知り得ない。
高級住宅地に住み、物理的に不自由なく暮らしていたとしても、みんながみんな「幸せ」だとは限らないように。
チグサさん家のバルコニーには、こんなに可愛いお猿さんが遊びにくる。
動物園の檻の中でしか見たことがないような子が。
木から木へ、自由に外を飛び回っている。
「見たことのない顔がいるぞ」と、まるでこちらが観察されているような気がした。
訪れる予定のなかったファヴェーラへ行くことが出来て本当に良かった!
チグサさん、ありがとう!
ファヴェーラを訪れる前に知っておくべき事
もしこの記事を読んで「自分もファヴェーラに行ってみたい」と思った方は、これから書くことを、しっかり読んで、理解してから行ってください。
あなたの命にも関わることです。お願いします。

「ファヴェーラに行きたい」と思っても、観光客が勝手にファヴェーラに入るのは歓迎されません。危険です。
無知な観光客が「今日はファヴェーラに行ってみよう」とフラっと単独で行ったり、「少しなら平気でしょ」と軽い気持ちでファヴェーラに足を踏み入れる人もいるようですが。
絶対にやめたほうがいいです。軽率すぎます。
検索すれば出てくると思いますが、ファヴェーラに入った観光客が何人も撃たれて死亡しています。
ある旅行者は、単独でファヴェーラ内を歩き回り、写真を撮っていたところ撃たれて亡くなりました。
車を運転していた夫婦が、ナビに従って道を進んだところ、誤ってファヴェーラに入ってしまい、撃たれたという事件も起こっています。
ファヴェーラには銃を持った監視役がいます。
写真を撮るにもルールがあります。
当然ながら、ファヴェーラの住人や監視役は、あなたがファヴェーラの住民かそうでないかは一目で分かります。
ファヴェーラ内の状況は日々変わります。
もしファヴェーラ内のどこかで銃撃戦が起こっている最中に、間違えて足を踏み入れてしまったらどうなりますか?
住民でない限り、ファヴェーラ内の状況を知る事は出来ません。
ファヴェーラを個人で訪れては絶対にいけません。
どうしても訪問したい場合は住人の方にガイドをお願いしましょう。
日本語でのツアーは少ないですが、英語ツアーはたくさんあります。
最後に。ファヴェーラの住人でない私が言うのもなんですが。
ファヴェーラの住人や住民の生活は見世物ではありません。
あなたやあなたの生活が見世物ではないのと同じです。
ファヴェーラを訪問する際は、住民の方に敬意を払いましょう。
そして、ツアー・ガイドさんの言うことは必ず守りましょう。
ツアーのガイドをしている方たちも、そのファヴェーラに住んでいるのです。
ガイドの方が言う事を守らずに勝手な行動を取ると、自分が危険な目に遭うだけでなく、ガイドやガイドのご家族にも迷惑がかかります。
「訪問させて頂いている」という事を忘れずに、ツアーに参加するようにしましょう。
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