「動物」としての勘とバゴーの人々【ミャンマーひとり旅】

Myanmar-bago-inle-bus(c)Megumi Mitani Myanmar
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こんにちは!フルタイムトラベラー、三谷めぐみ (@meg_intheworld)です。

ミャンマー国軍のクーデター。日本に住む多くの人たちにとっては「怖いことが起きてるね。(でも私たちには関係無いよね。)」という感じで、ひとつの”ニュース”として消化され、10秒後には忘れ去られる。
私自身もそうだけど、行ったことがない「よく知らない国」で起こっていることというのは、色んな面で、想像がしづらい。
そこで、少しでも「ミャンマー」という国に関心を持ってもらえたらと思い、2019年春にミャンマーをひとり旅した時のことを旅エッセイ的に綴ることにしました。少しずつ更新していくので、のんびり読んでもらえたら嬉しいです。

今日は、チャイティーヨーからバゴーへの道のりと、バゴーで出会った人の話。

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チャイティーヨーからバゴーへ

ゴールデンロックを間近で見ることができた私は、再びトラックに乗り40分かけて下界に戻った。

ホテルのシャワーで砂埃を洗い流し、Kyaiktiyo(チャイティーヨー)からBago(バゴー)行きのバスが来るのを待っていた。

Myanmar-bago-inle-bus(c)Megumi Mitani

木材で出来ているホテルのロビーは、全方向に窓があり、風がよく抜ける。クーラーの効いた涼しい部屋よりも、居心地が良かった。

竹を組み上げて作られた美しい椅子に座りながら、ゴールデンロックで撮ってきた写真を確認していると、モワッとした、なまあたたかい風が吹き込んできた。

スコールがくる。

間もなくして、地面が割れるんじゃないかと思うほど大きな雷の音が響いた。

5年前まで、いつでも快適に過ごせるよう温度管理されたビルの中で働いていた私は、天気を読むことなどできなかった。

そもそも、天気を気にする必要すらなかった。
電車に乗って駅直結のオフィスビルに入れば、1日中その建物の中で過ごすのだから。

アジアを旅するようになって、スコールが読めるようになった時「動物としての勘のようなものが私にもあったのだ」と気づいた。

1時間前まで真っ青だった空は、どんよりとした厚い雲に覆われた。

激しい雨が降り始めると、ホテルの庭に咲いている木々は、呼吸をするかのように鮮やかなグリーンに変わり、ピンク色の花も雨水を浴び、生き生きとして見えた。

12時半に来る予定のバスは、13時を過ぎても来なかった。ミャンマーでは、バスやお迎えが遅れるのは日常茶飯事だけど、この日600Km先のインレー湖を目指す私は少し焦っていた。

フロントにいた若い男性スタッフに「このバスを待っているんだけど、何時に迎えに来るか聞いてもらえませんか?」と言ってチケットを見せた。

真面目そうに見える彼は「今電話して聞きますので、あちらで座って待っていてください」と告げ、すぐに確認してくれた。

それから30分後に来たバスは、日本の昭和中期のものと思われる、各座席の前に灰皿がついた、古いボロボロのバスだった。

スコールの中、窓が開けっ放しだったのか、座席は全て濡れていた。そしてどの座席にも白い粉のようなものがふりかけてある。

こんなバスに2時間以上も座るの!?

と思った私は、バスのスタッフに「湿っていて座れないよ。(白い粉を指差しながら)これは何!?」と伝えると、「Ok, Ok, No Problem(大丈夫、問題ないから)」と言われ、座るしかなかった。

後ろを振り返るとアジア系の男性が1人乗っていた。

その後、空のペットボトルを大量に抱えた尼さんが1人乗ってきて、乗客は3人になった。

古いバスは10分ほど走った後、大通りに停車した。

「ここで降りて次のバスを待って。すぐ来るから」と言って古いバスは去っていった。

バスから降りた私は、唯一の他の観光客と思われる、同じバスに乗っていたアジア系の男性に「どこまで行くの?どこから来たの?」と声をかけると、その人は日本人だった。

久しぶりに会った日本人と母国語で会話することができて、少しホッとした。その人はヤンゴンからゴールデンロックまで日帰りで来ていたらしく、ヤンゴンに戻る途中だった。

車が行き交う埃っぽい大通りで話をしていると、次のバスがやってきた。急いで乗り込み、私が途中で降りるバゴーに着くまで、お互いの旅の話をした。

2時間ほどでバゴーに到着し、バスを降りると、すぐにバイクタクシーが声をかけてきた。

どこに行くの?インレー?バスのチケット会社に連れてってあげるよ。2,000チャットだ。

と言ってバイクで3分の店に連れて行かれた。

バゴーの人は嘘つき?

バゴーには数時間しか居なかったので、断言はできないけれど。ミャンマーの中でも独特な空気感のある場所だった。

ブラジルのリオデジャネイロのバスターミナルや、ペルーのリマの空港付近で感じた「それ」と同じようなものを感じ取った。

「タトゥー」というには大きすぎる立派な刺青が入った上半身裸の男達が、昼間からタバコを片手にビールを飲み集まっている。

観光客相手のバスチケット売りの男も、タバコの煙を私の顔に吹きかけながら話をする。

「暑いだろう?」と扇風機をこちらに向けたり、大きな地図を広げながらフレンドリーに振る舞うその男も、周りにいた男達も、目がギラギラしている。

観光客である「カモ」を狙っているのは明らかだった。

私は平静を装い「ちょっと他でも聞いてくる」と言って、店を後にした。

すると今度は別のグループと思われる男が声をかけてきた。

私が相場を知らないと思っているのか、2〜3倍の値段を提示してきた。断っても「ディスカウント、スペシャル、OK」とい言いながら、後をついてくる。

道端ですれ違う男性も女性も所構わず、唾を吐く。
ものすごい音を立てながら。。

早くバゴーを出たい

それしか考えられなかった。

バスターミナルのような、少し開けた場所があったので入ってみることにした。

チケット売り場や食堂が並んでいる。一番奥にある店に、若い女の子と子供が座っていた。

ここなら安心かも?と思い「インレーに行きたいんだけど、バスのチケット売ってる?」と女の子に声をかけると、近くでスマホ片手に寝転んでいた20代前半と思われるガタイの良い男を起こした。

上半身裸でガッツリと刺青が入っている。
身体を起こすと、タバコに火をつけ、どこかに電話をし始めた。

あぁ。これはバゴーのスタンダートなんだな。

と察した。

英語はほとんど通じなかったけど、この若いカップルからチケットを買うことにした。ギラギラとした、いかにも悪そうな男達から買うよりよっぽど良い。

バゴーからのバスはトラブルが多いと聞いていたので、「インレー湖のニャウンシェまで行くよね?」と何度も確認した。

バスが来るまでの2時間、その場で待たせてもらい、女の子と子供と話をしていた。

女の子は16歳、男の子は8歳で、2人とも学校には行っていないようだった。男の子はお姉さんの子供で、彼女が面倒を見ているらしい。顔にタナカを塗ってあげている姿は母性に溢れていた。

8歳の男の子も店の前を掃除したり、夕方になると「蚊が来るからね。これをつけるよ」と、ライターを取り出し蚊取り線香をつけていた。

肩から斜めにかけたバッグには彼の大事なものが入っているのか、ときどき中を確認しては、ひとり頷いていた。

やることがなくなると、私の隣に座って「喉乾いた?水はいくらで、ジュースはいくらだよ。」「ねぇ、ペンは持ってる?傘もあるけど、いる?」と聞く。

簡単な英会話もできるし、愛嬌もあるので、8歳にして立派な商売人だな、と思った。

18時頃バスが来たので、3人に別れを告げてバスに乗った。

バゴーからインレーまでは約10時間。
ミャンマー初の夜の長旅だ。

新しく清潔なバスの車内は、クーラーが寒いくらいに効いている。乗客は少なく、私は一番前に座った。通路を挟んだ隣に座っているのは尼さんひとり。

これなら安心して眠れる。よかった。

と喜んでから、10時間後の午前4時。

見知らぬ国ミャンマーの、街灯もない真っ暗な田舎道で、突然バスから降りるように言われた。

「バゴーの人は嘘つきだからな」

それがバスを降りる前に聞いた、最後の言葉だった。

つづく。

ミャンマー旅のTIPS:バゴー観光は日帰りツアーで

Bago(バゴー)は、1990年までPegu(ペグー)と呼ばれていた。だからBagoと言うと「Pegu?」と聞き返されることもあるし、Google mapでは2021年現在も「ペグー」と表示されている。

ヤンゴンから1時間半の距離にあるバゴーは、かつてビルマで最も栄えた町の面影はもはやなく、「廃れた町」という印象だった。

シュエモードパゴダ、チャカッワイン僧院、巨大な寝仏などいくつか観光できる場所はあるけど、立派なパゴダも僧侶も寝仏も、実のところバゴーでなくても見られる。

だから、本音を言えば「観光でわざわざバゴーに行く」必要はないと思っているし、友人には勧めない。

それでも「バゴー観光に行きたい!」という人は、治安とアクセスの面から、ツアー利用が良いのでは?と思います。

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この記事を書いた人

自然と芸術を愛する旅人。世界各地で家を借りながら暮らす「デジタルノマド」9年目。40ヶ国。

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